未来人と僕らの夏(前編)
外で雨がしつこく降る中、森の奥から記事を書いています。
今回の記事から、ある一人のVTuberにスポットを当てます。というのも完全に僕としては7月7日の配信にあてられてしまって、突貫工事で書きなぐっているような形を取っています。一応前から書こう書こうとは思っていたのですが、ついに決定打をもらってしまった形です。上記のとおり、今回はそのVTuberを追いかけていない人には伝わりづらい話かもしれないということを予めご了承ください。
今回ご紹介したいのは、にじさんじ所属ライバー二期生の『夕陽リリ』さんです。以下がプロフィールになります。
16歳の高校1年生。遠い未来から配信をする元気な女の子。 悪戯好きで、よくいろんなことをやらかす。現代の電波をジャックして、悪戯の一環として配信をはじめた。
引用元→https://www.ichikara.co.jp/official
御覧の通り、彼女は『未来人』です。
その真偽のほどは置いておくとして、生配信というものはとかく予測できない事態の連続で、ままならないこともあれば、予想の斜め上を行く展開になってしまうこともあります。そんな生配信という土俵で、夕陽リリさんの未来人という設定(ここではあえてこの言葉を使います)が、奇跡のように噛み合って僕たちに感動を与えてくれた配信があります。
それは5月13日に行われた『夕陽リリ初YouTube配信』と、7月7日に行われた『会いに行くよ 七夕未来配信』です。
〇5月13日 夕陽リリ初YouTube配信
夕陽リリさんは、未来から我々が住む現代に向かって電波ジャックを行い配信しているため、あまり環境的に良いとは言えませんでした。長らくMirrativを中心に僕たちと交流を図っていました。彼女はゲームが好きなので、早くYouTubeでゲーム配信を行いたいと言っていましたが、YouTubeの彼女のページにはたくさんのリスナーが登録を行い待っていても、動画が上がることは長らくありませんでした。しかしついに彼女の配信環境が整い、YouTubeでの初配信が行われる運びとなったのが5月13日でした。
こんばんは!夕陽です!!初YouTube配信まで24時間を切りました!!未来人お腹が痛くて眠れません!!よろしくお願いします!!!!!🌃🌃🌃🌃🌃🌃
— 夕陽リリ (@Yuuhi_Riri) May 12, 2018
結論から言わせていただくと、彼女の配信は失敗に終わりました。少なくとも彼女は失敗に思っているようです。都合3時間以上かかって、僕たちに声が届いたのは恐らくたった3分程度でした。
本日配信遊びに来てくださった方ありがとうございました!!未来と現代!!!やっぱり遠いですね!!!ごめんなさい!!!ミラティブ少しだけ皆さんとお話しできて良かったです!!本当はもう少しここにいたかったけど、iPhoneさん高熱でかーっかっか活動限界!!!でした!!!
— 夕陽リリ (@Yuuhi_Riri) May 13, 2018
しかしその待っている3時間に様々なドラマがありました。僕たちはYouTubeのコメント欄で、Twitterで、PCの前で、夕陽リリさんが現代に声を届けてくれるのを待っていました。そして彼女が苦戦する裏で、同じにじさんじのメンバーたちが彼女の初めての交信を支えようと、影に日向に彼女の配信をフォローしていました。
リリちゃん来るまでミラティブやりますかね
— 剣持刀也@にじさんじ所属 (@rei_Toya_rei) May 13, 2018
コメント欄でモイラ様が、Twitterで家永むぎさんが、直接伏見ガクくんが、配信で剣持刀也さんが、とにじさんじの結束の固さを見せつけるような動きがリアルタイムで進行し、否が応にも彼女の配信を見届けたいと、僕を含めたリスナー全員がかたずをのんでいたと思います。
そんな様子を表すワードクラウド(Twitterのタイムライン上から多く呟かれた言葉を視覚的に表すもの)があります。僕のフォロワーさんから提供されたワードクラウドで、リリちゃんの配信を今か今かと待ちわび、応援の言葉を投げかける様子が見て取れます。
あの、配信とSNS、ライバーとリスナーが一体になったような空気感はあの瞬間にあの配信に立ち会えた人間にしかわからないかもしれません。しかし今、こんな奇跡のような出来事がにじさんじの、そしてVTuberの配信ではたくさん起こっています。
夕陽リリさんのLive放送待機部屋にはたくさんの人たちが待っていましたが、聞こえてくるのは砂嵐のようなノイズだけ。段々と僕のタイムラインにも明日のために泣く泣く眠りにつく人々が増えてきました。僕もこれはダメかな……と思って、配信を閉じようとした時、一際大きなノイズがヘッドフォンから聞こえてきました。慌てて配信画面を見ると、滝のようなコメントが異変を知らせていました。僕もヘッドファンを耳に押し付けて、彼女の第一声を逃すまいと集中していました。
「聞こえますか?」
たった一言。聴きなれた彼女の声が聞こえてきました。
彼女の少し疲れたような声と必死な様子に、彼女がこの3時間ずっと我々に語り掛けていたことがわかりました。そしてその不安そうな声とノイズ交じりの音声に、何だか本当に未来と交信できたような、切ない気持ちになってしまいました。未来と現代のラグによって、リスナーたちの『聞こえたよ』という言葉は彼女になかなか届かきませんでしたが、彼女がコメントを確認出来た瞬間の歓喜の声を聴いた瞬間、恥ずかしながら僕はボロボロと泣いてしまいました。
そこからは少しだけ僕たちに喜びを分かち合った後、また配信は途切れてしまい、その後、繋がることはありませんでした。
まるで1本のSF映画を見終わったようでした。
彼女の未来人という背景と、生配信という予測不可能な舞台、そしてにじさんじのメンバーと見守り続けたリスナー。そのどれもが欠けてもなしえなかった3分間の未来との交信だったと思います。VTuberという存在はSNSとの相性が抜群に良く、同時に強いリアルタイム性を持っているため、まるで物語がその場で作られているような感覚を覚えます。夕陽リリさんの前述の配信はその極致であり、その場にいた皆が心を合わせて物語を作っているようでした。
夕陽リリさんの配信は、最早配信そのものが未来人という彼女の背景のストーリーテリングとなっています。彼女の配信を見ることで、「未来人がいるってこういうことなのかもしれない」と思わせてくれます。僕たちはどっぷりと物語の中に入り込むことができ、そして夕陽リリという人間に感情移入することができます。このYouTube初配信は、彼女の持ち合わせている物語力とでも言うべきものを象徴するものとなったと思います。
本当は2つの配信についてまとめて1つの記事にしようと思っていましたが、思いのほか長くなってしまったので、前後編に分けることにしました。後編では7月7日に行われた七夕配信について書きます。