この木 なんの木

森の奥から時々記事が届きます。

二次元アイドルオタクがバーチャルyoutuberにハマった話

 

バーチャルyoutuber(以下、VTuber)にハマりました。

数か月前からちょこちょこと見始めていて、キズナアイさんから始まり、電脳少女シロさん、輝夜月さん、ねこますさん、ミライアカリさんとまるで餌にかかった魚のようにずるずると引っ張られていき、株式会社いちからが手掛ける『にじさんじ』に入った瞬間、自分の中で「これはもう抜けられないな」という確信を得ました。

 

 

僕は二次元アイドルが好きです。2014年頃よりアイドルマスターSideM(モバゲーにて好評配信中!)という男性アイドルをプロデュースするゲームとそれに関わるコンテンツをずっと追いかけています。「卯月巻緒」というケーキが好きな男子高校生アイドルと出会い、彼を推すこととなりました。ここまでは僕の背景に関することで、今は事細かに話す必要はありません。このくらいにしておきましょう。


VTuberはとても最近できた文化です。バーチャル空間上のキャラクターをモーションキャプチャー等を通して演者の動きとリンクさせ動かすというもので、その表現方法やアプローチの仕方は多岐に渡ります。今では1000人以上のVTuberが存在し、毎日何かしらの動画投稿や配信が行われ、とても活発に活動が行われています。


VTuberという存在は、『三次元の人間に、二次元のアバターを被せて、そのキャラクターを演じている』という現象だと思っていました。つまり彼らは元々人格を持った三次元の人間であり、彼らとは全く別物の、バーチャルな新たな人格や存在として我々を楽しませてくれている。仮想現実での仮想のキャラクターによる仮想のやり取り。

しかしずっとVTuberの配信を見ているにつれて、その考えは変わるようになってきました。僕が好きなのは本当にキャラクターなのでしょうか。彼らが笑う時に僕も笑い、彼らが感動する時には僕も感動し、彼らが涙する時には僕も涙する。これらの物事が視覚的・聴覚的情報による錯覚なのでしょうか。彼らと一緒に経験する事柄は確実に僕に影響を与えていて、彼らの感情はしっかりと僕の感情とリンクしています。


ここでは彼らの実存性に対して言及するつもりはありません。ただこれまで僕が触れてきたものたちと、明らかに異なっていると思っていたものが、実は根本の部分で同じものであったということがある時、突然見出されたのです。VTuberというものが前述の仮想現実性にのみ価値が見出されるとお考えの方がいらっしゃるならば、もう少し違った視点から考えてみるのも悪くありません。これは『中の人』とか『魂』とか、そういった言葉で表されるものとは違った、本質的な『何かを好きになる』ということとは、どういうことなのかということです。

 

 

僕は二次元アイドルが好きです。ただ、彼らがアイドルだから好き、というわけではありません。多分、僕は彼らがアイドルでなくても好きであったろうと思います。特にアイドルマスターSideMというのは特殊な設定があり、仮に彼らがアイドルになれなくて他の仕事(前職)をしていたにしても、彼らのことを好きになっていたのでしょう。担当にしても、アイドルをしている以外の時の、好きなケーキを食べている姿や、ユニットの仲間と助け合っている姿、親友と心を通わせている姿が好きです。彼らは一生懸命好きを表現し、この好きをみんなに知ってもらいたい、みんなも同じように好きになってほしいと努力しています。


僕は格闘ゲーマーの配信を見るのが好きでした。彼らは本当にゲームが上手くて、それを生業とし、それに夢を託していました。ゲームが本当に大好きで、1日中ゲームをやっていても飽きないし、ゲームに本気になれる人たちでした。勿論彼らがゲームを競技としてプレイしている姿も好きでしたが、それ以外にも他のゲーマーたちとくだらないことを話したり、馬鹿なことをやっているのが大好きでした。好きな格闘ゲームを真剣にアスリートとして取り組んでいる姿は本当にかっこよくて、それでいて毎日配信の中で少年のように遊んでいるのを見るのが大好きでした。彼らが大会で優勝したり、プロになったときは自分のことのように喜びました。


僕は今、VTuberが大好きです。今ではたくさんのVTuberの方がいて、いろんな配信があり、いろんなドラマが生まれています。奇蹟のような出来事が起こり、天才的としか思えない発想が溢れでてきます。面白い話をする人、素敵な歌を歌う人、変なゲームをする人、VRに挑戦する人……ただどの人も『自分の好きなこと』をどんどんと追及していきます。好きなことを楽しそうに皆さんの前に披露しています。VTuber同士の交流も増え、本来出会うはずのなかった人たちがバーチャルな世界でめぐり逢い、毎日追いきれないくらいの配信や動画が作られていることがとても楽しいです。

 

僕は『今』とても楽しい。

 

僕は『人』が好きなんだと思います。人が何かを好きであるということの可能性や、人が他者を笑顔にできるという可能性を信じています。そしてそれは過去においては二次元アイドルや格闘ゲーマーを対象としていましたが、その対象がTtuberにとって代わったというだけに他なりません。VTuberはとても新しい文化ですが、人を魅了するその根幹はこれまで好きになってきたコンテンツと一切変わりがないように思われます。『仮想』と称されたVTuber達を通じて、『人』が好き出ると結論づけられることは何だかおかしなことで、僕は何だか不思議な気持ちになります。それでもこれまでいろいろな創作物や物語に触れてきて、何かにのめり込むとき、最終的に『人ってなんだろう』とか『生きるってどういうことなんだろう』という感想に至ることが多かったのは事実です。

 二次元アイドルも格闘ゲーマーもVTuberも僕の実際の生活には関与してきません。特に僕は田舎に住んでいますので、イベントやゲーセンといったものも、かなり縁遠いものです。全てネット上の出来事で、そのせいで僕の生活が劇的に変わるわけではありません。だけどそれは確実に僕の幸福度を上げていて、僕の感情を動かし、そして実際に僕を動かしています。

 僕はこの「好きが好きを巻き起こし続ける空間」を素晴らしいと思うし、そしてそこにいることで僕の中に、無限に好きという感情が溢れてくることに驚きます。僕は元々人付き合いが苦手で、誰かを好きになるとか、結婚をしたり子供を育てるといったことに、強いシンパシーを覚えることができませんでした。しかし、こういった土壌に触れることで、恐らくそれは間違いであったことに気づきました。僕はしっかりと社会性を持った人間で、たまたま社会的な繋がりを持ちたいような人間に出会えなかっただけ……あるいは自分から出会おうとしなかっただけなのかもしれません。
 
 


 長々と書いてしまいましたが、何かを『好き』でいたいと思う人、そして何か新しいワクワクを探している人は是非VTuberに触れてみてください。

 とても楽しいですよ。